The Arrival   Kenny Dorham                                          
  T. BS. P. B. DS.
  Recorded 1960
  ★★★★★

  ケニー・ドーハムの「ザ・アライヴァル」は、彼の実像を伝えたアルバムである。まずジャケットの写真のカッコよさに驚かされる。そして、ディスクを聞くとステレオ録音の指向性のよさに気づかされる。更に第1曲でバリバリのハードバップに感嘆させられる。

クリフォード・ブラウンの逝去後、マックス・ローチのクインテットに迎えられたのは、ケニー・ドーハムであった。ケニー・ドーハムは、その当時、トランペットのバリバリのハードバッパーであった。このアルバムは、そのようなケニー・ドーハムをよく伝えている。第1曲の8分余りの"Stage West"
にすべてが語られている。冒頭からのテンポの速い粋なアドリブは、本当に素晴らしい。ピアノはトニフラなるトミー・フラナガンである。それにバリトンのサックスが絡んでくる。将にモダンジャズの真髄を伝えている。ベースのゴリゴリした音が入ってくる。アッというまに曲は終わってしまう。第2曲は、ケニー・ドーハムの歌心溢れるナンバーである。第3曲は、弱音機をつけたトランペットのクールなバラードである。




          Around the City    Eliane Elias     

  Recorded 2006
  ★★★★

 
イリアーヌは、ブラジル出身のピアニストでニューヨークで活動してきた。1980年代からジャズピアノで活躍して、名曲を生み出しグラミー賞にノミネイトされることもあった。ボーカルは余技であったが、その魅力はファンの注目するところであった。”Around the City"は、将に初めての本格的なヴォーカルのアルバムである。すでに、通算20枚になるベテランであるイリアーヌの人間的な魅力が余すところなく発揮されている。

「アラウンド・ザ・シティー」は、コンテンポラリーな都会的でポップなアルバムに仕上がっている。ボーカルは、真っ白な綿菓子のようにほんのりスウィートなアルト・ヴォイスでミスティークでさえある。オーケストラを背景としたジャズヴォーカルはイリアーヌの夢が叶ったかたちになっている。No.1"running"
No.14"the song is you"(日本盤ボーナストラック)とは、ポップで魅力的なイリアーヌのヴォーカルを堪能できる。




         Pike's Peak    Dave Pike
 
  VIB. P. B. DS.
  Recorded 1962
  ★★★★★

  
デイヴ・パイクは、1960年代のヨーロッパでヴィブラフォーンで最も成功したジャズメンである。白人であるが、よりソウルフルな演奏が不思議な魅力になっている。うなりながら演奏するスタイルには、何らかのインスピレーションがあるのかも知れない。「パイクズ・ピーク」は、ヴィブラフォーンの音色の美しさとソウルフルなスタイルは、文句なしの五つ星であると思う。

No.5"Wild Is The Wind"
は、ディミトリ・ティオムキンの57年の映画主題歌であるが、器楽でこれほどの魅力を引き出した演奏は少ないと言われている。歌うようなスローテンポと溢れんばかりのリリシズムは、パイク一世一代の名演である。




    Anita Sings The Most    Anita Oday

  Recorded 1957
  ★★★★

  
アニタ・オデイは、クリス・コナー、ジェーン・クリスティなどと並んで、白人ジャズ・ヴォーカルを代表する一人である。しかし、彼女の道は安易なものではなかったようだ。20代の活躍は華やかなものがあったが、後半に大きなスランプがあり、アル中になったとも言われている。花の命は短く思われたが、ここに救いの神が現れた。ヴァーヴレーベルを立ち上げた興行主ノーマン・グランツである。

大のジャズファンであったグランツは、アニタの才能を見込み、次々に思い切ったレコーディングを始めた。"This is Anita"が、LPでアメリカでベストセラーになり、その数ヶ月後に"Anita Sings The Most"(アニタ・シングス・ザ・モウスト)がレコーディングされた。この2枚はアニタの最高傑作とされている。その後アニタは堅実にキャリアを磨き、アメリカ・ジャズヴォーカルの大御所となり多方面の活躍をした。惜しくも去年(2006年)に逝去した。しばらくアニタを偲ぶ企画が行われたようだ。

アニタは、アメリカ白人のジャズ・ヴォーカルの礎を築いた。その後に出たジェーン・クリスティは忠実にアニタの実績を踏まえている。ハスキーヴォイスでスキャットを得意とするアニタのヴォーカルは、モダンジャズの大きな遺産である。No11"Bewitched"
は、このアルバムの最も親しみのある歌である。




        Fuego    Donald Byrd

  TP. AS. P. B. DS.
  Recorded 1959
  ★★★★

  
ドナルド・バードは、兵役後にニューヨークでデビューして、ハードバップの渦中にあったジャズ・メセンジャーに入団した。クリフォード・ブラウン亡き後、ポスト・クリフォード・ブラウンという評価を集めた。トランペットの音はクリアーで安定している。度量の大きさを現している。

「フエゴ」は、1960年代のジャズ喫茶では、最も人気のあるアルバムの一つであった。B面になると、お客の合唱になったという逸話があるくらいである。No.2"Bup a Loup"
は、出だしがリズミックであり、あの有名なサキコロの"Stroad Road"を彷彿とさせる。その後深いアドリブの世界に入っていく。マクリーンのアルト・サックスが光っている。ジューク・ピアソンのピアノも素晴らしい。トランペットがさりげなく入って、独壇場になっていく。再び冒頭部が現れて終了する。




    My Fair Lady    Shelly Manne

  DS. P. B.
  Recorded 1956
  ★★★★

  
1956年に開幕したミュージカル「マイ・フェア・レディー」にあやかり、主題歌を集めたジャズ・アルバムがシェリー・マンやアンドレ・プレビンの手でつくられた。その反響は予想を超えて大きく、たちまちベストセラーになり、人気は2年余りにも続いた。

「マイ・フェア・レディー」の主題歌をテーマをピアノが奏し、それを崩すような格好でアドリブが続いていく。軽くてオシャレなアルバムになっていて、今聞いても全く何の遜色もない。ジャズ演奏の音楽性の高さを物語っている。アンドレ・プレビンは、映画音楽の世界から身を引いて、ロンドン交響楽団に迎えられるという奇妙な出世をしている。ジャズからクラシックに転向するという極めて珍しい例である。

No.2「君の住む街で」
では、暖かい主題歌をピアノが演奏する。しばらく主題歌の続きが流れるが、次第にジャズ風にアレンジされていく。




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